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過労自殺の電通社員の報道を見て、新卒で広告業界を目指す就活生に伝えたいこと

Dentsu

はじめに

電通の社員が自殺したニュースを見て、心から残念に思います。そして、親御さんの気持ちはいかばかりか。この数日、いくつかのブログやブクマに目を通した。上司が悪い、会社が悪い、社会が悪い、業界が悪い、クライアントが悪い、などがほとんどです。つまりは、みんな悪い。「こんなに働くなんておかしい、狂っている」広告業界以外の方はそう思っているのではないでしょうか。

さて、筆者であるわたしは、現在広告業界から一歩身を引いて、現在モラトリアム中の身です。

意外に思われるかもしれないのですが、広告業界の人間の多くは、自分の仕事を心から愛していて、この世界以外に自分を活かせる場所はないと思っていて、それに「命」をかける人たちです。一方、亡くなった電通社員の方には、本当に気の毒に思います。彼女は、徹夜やパワハラに殺された。広告業界の常識に潰されたのです。

だから、学生諸君、転職検討者には、大きな声で言いたいのです。「プライベートや睡眠時間が惜しいのなら、広告業界に行ってはいけない。広告のためなら、罵倒すら栄養にし、24時間いつでも『喜んで!』と言える人でないと、広告業界に殺されてしまう。広告に命を奪われてもいいという人以外、決して行ってはいけない。家族が大事な人、恋人が大事な人は決して行ってはいけない」。今日の記事はそういう話です。

広告業界がブラック状態を抜けられない理由

残念ですが、どんなに頑張っても広告業界は決して自らの力では変われないと思っています。もし、変われるとしたら、日本のすべての業界がホワイトになった後でしょう。広告業界なんて、そもそも世界的に見ても労働感覚が狂っている業界なのだが、特に日本の広告業界は狂っていて、日本の電通はその頂点だと思っています。

電通と仕事を組んだときのブラックなエピソード

わたしも、知り合いの紹介で、その電通とコピーライターとして仕事をご一緒させていただいたことが何度かあります。もう昔々のことですが、あるメーカーの記事広告を出すからよろしくと、はじめての仕事はスタートしました。地味な仕事でしたが、天下の電通様と仕事が広がると、即了承。

タレントが製品の使い心地を語る記事広告で、たかだか数ページの雑誌広告です。朝8時集合で、ロケ地に行って撮影中に取材。このとき電通の何の担当だかよくわからない社員が入れ替わり立ち替わり15名くらい来ます。1雑誌で数ページの案件なのにと焦った覚えがあります(メーカーの年間予算は莫大なんだろう)。あとは出版社の社員が数名、タレントは1人、マネージャー1人、クライアント(メーカーの宣伝部)1人。最後に制作スタッフはわたし含む5名です。要は10人もいれば十分の現場に、電通から政策上なんのプラスにもならない15人が来たわけです。

19時にタレントの取材撮影が終わってクリエイティブ・ディレクター(CD)が言います。「明日の朝イチ(8時のこと)で、3案くらいよろしく」。記事広告だから[キャッチ1本、サブキャッチ5本、ボディーコピーは5,000文字]×3案か… さすがに朝イチは無理。「ちょっと、朝イチは…」とわたし。「あっそ、しょうがないな、デザイナーさんも待たせてるんだからさ、午後イチで」とCD。「OKす。午後イチなら、なんとか…」そんな感じです。質より量という考え方がにじみ出ています。

徹夜で作業して、なんとか朝イチに5案をメール送信(サービス精神)。やっと寝れると思ったら、もう11時には電話で起こされます。「コピーいいんだけど、何かこう刺さらないよ(全然良くないらしい)。なる早でちょっと修正しておいて。とりあえず、朝イチに貰ったのは、時間ないから先方に出す」。「わかりました」。そして、別件も進めながら、ようやく修正案を19時に出すが、遅いと叱られます。

もちろん、その修正案は無視されて、その電話で最初のA案とC案とD案をうまく混ぜた感じで、もう2案作れと言われます(要は最高の一本より、たくさんクライアントに出すことが大事だと思っている)。そして翌朝までに出すわけです。

こんな感じのやり取りを数日間繰り返します(朦朧として覚えていない)。そして入稿(締切)日がやって来て、CDが最後に言い放った言葉がこれです。「先方さんさぁ、一番最初のA案をすごく気に入ってたよ。結局、A案で決まった。修正無し、お疲れー」。「ありがとうございましたっ(最初の一案だけでよかったってことじゃん!!)」。

もちろんギャラは大手ほどいい。その代わり、魂を削ります。その後も何度か仕事をする中で学んだことは、自分には電通と仕事をする能力がないってこと。

電通の有名CDの言った本音

さて、これよりもっと若いころ、電通の有名なCDに飲み要員で気に入ってもらっていた時代がありました。酔いに任せて「仕事くださいよぉ」と言うと、「いいよ。いいけどさ、成功しても全部オレが持っていくよ、いい? オレ、仕事は鬼だよ。やめておいたほうがいいよ、死ぬから。友だちがいいよ」。一緒に仕事をしたかったのですが、とうとうCDは仕事をくれませんでした。たぶん本当に気遣ってくれていたんだと思います。その後、この僅かな雑誌広告案件ひとつで、電通の本当のヤバさを知ってホッとしたのでした。

でも、電通以外の広告代理店だって、実は似たようなものなんです。徹夜の回数が数回減る程度。その数回が大きな違いなのですが。もう一つ言っておくと、わたしはこの仕事が楽しかったのです。滅茶苦茶辛かったけど楽しかった。入稿って言われて、ドバーッとアドレナリンが出た感じがしました。幸せだったのです(当時は)。

プロダクション勤務時代は、5時に帰宅で9時に出社の日々。朝の5時9時生活

プロダクション勤務時代から徹夜とか、朝帰りは当たり前でした。タクシーは自由に使えたので、だいたい朝5時にタクシーを拾って、家に帰って風呂入って、ソファーで寝て、妻が会社に出社する8時半に起きて、9時に会社に向かう日々でした。

フリーランスになってからは、心臓発作になるまで働いた

フリーランスになってからは、ある時なんて、年末に10本くらいの案件が同時に進行し、さすがにやばい状況でした。辛いからと顔なじみの医者に日局の酸素ボンベを処方してもらい(もちろん保険外)、酸素ボンベを仕入れ、カニューラで吸引。イスは、ストッケのグラビティで固定状態。

だんだん仕事の能率が落ち、最後は3徹。こういう時は1本3、4千円するユンケルスターが効きます。スターになりたい。3日続けて飲みました。さぁ4徹か… と夜になり、胸が魔物に潰されるかのように、ぎぃゅーっと締め付けられました。発作。死ぬ… なんとか、深夜タクシーで救急外来へ。心電図がやばい。心筋トロポニンの値が高い。入院。昼に心臓カテーテルやりましょう…と。

代理店とか、プロダクションに締切が間に合わない旨を電話します。皆、同情の声?「大丈夫っすか、まじで。とりあえず、生きててよかったすね。なんとか、スケジュールを後ろに倒しますんで、よろしくお願いします」。「明日は、打合せを代わりに行ってテープ取っておくんで、それ聞いてくださいね」。この期に及んでも、仕事をさせたいらしい。それでも「ハイ!よろこんで!(庄屋風に)」と返事してしまう悲しい自分がいます。それでも、自分のアイデアがCMになってオンエアされた時の幸せは何度でも味わいたいものなのです。中毒ですかね。

さすがにその日はよく寝ました。何日ぶりでしょうベッドで寝たのは(病室である)。不思議なもので、カテーテルを心臓に入れましたが何の悪いところもありませんでした。原因は不明。医者曰く「これで死んじゃうと心不全とか、過労死ってなるんですよねぇ。気をつけてください」。「はい、すみません」。そして、翌朝、退院して仕事再開です。人間、限界突破すると、精神よりも先に内臓が死ぬと思いました。

ブラックな勤務状態に文句を言う人に会ったことがない

こういう話は別に自分だけではありません。肺に穴空いて救急車を呼ばれたり、精神科のお世話になったり、毎日点滴打ちに行く人もいます。そこまでやっても、辞めたいとは思わない人がかなりの割合でいます。そこまでしてでも、この仕事を続けさせてほしいと願っているのです。つまり、みんな好きでやっているのです。こんなブラックぶりでも、好きで広告をやってる人にしか会ったことがないわけで、プロダクション勤務時代も、上司やクライアントや代理店の文句を言う人はいるが、勤務時間の文句を言う人間に会ったことがありません。(もちろん徹夜をしない人もいました。別に、上司を納得させられるものを作れるなら自由。こっちは好きで徹夜しているだけ)。

だから、天下の電通社員がTwitterに労働環境の辛さを書いていたことに驚いた。ネタではなく、本気で苦しんでいたとは… でも、なんで、電通に入社したんだろう。なんで、この業界に入ってしまったんだろう。なんで、うつ状態になる前に辞めようと思わなかったんだろう。なんで… と思う。

鬼十則くらい叩き込んで、就職しよう

地位・名誉・お金を得ることができても、死んだらおしまい。命より大事なものはありません。だから、若い広告マンの皆さん。やれると思って入った広告代理店だけど、辛くて「死にたい」とまで思うなら、休職するなり、退職するなりしてほしいと思います。殉職したいなら別ですが・・・。広告業界に就職したのなら、電通の鬼十則くらい知っていますよね。鬼十則とはすなわち、電通の行動規範のようなもの。電通以外の広告代理店も、これと似たようなものです。

電通の鬼十則(抜粋)

  • 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
  • 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
  • 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。
  • 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
  • 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。 引用:吉田秀雄 - Wikipedia

日本のTOP広告クリエーターになっても、ブラックを楽しんでいる

大手広告代理店に行くような人は、これを知っていて入社しているはず。ここは鬼ヶ島。ここでさらに戦いがあり、生き抜いた人だけがメジャーな広告を作る世界(すごい広告を作るから勝ち抜けるとも言う)。ピタゴラスイッチやだんご3兄弟で有名な元電通の佐藤雅彦さんなんか、常人じゃない体力と知力で伝説でした(東大アメフト部出身)

だから一流広告クリエイティブ・ディレクターは、ほとんどが電通と博報堂出身者が占めています。(出身と書いたのは、役員コースでもなければ、30~50歳の間で独立するなり、転職するなりします。終身雇用ってほんの一握り)。広告クリエイターなら、尊敬していない人はいないんじゃないかって人に、元電通のクリエイティブ・ディレクター佐々木宏さんがいます。

佐々木宏さんを知らなくても、リオ五輪の閉会式のマリオ、ソフトバンクの白戸家、BOSS、トヨタの実写版ドラえもん、大人グリコなどはご存じだと思います。日本の広告の現代史にこの人ありです。

佐々木さんは、寝ない人で広告業界では有名。超人である。

私なんてテレビ局に入りたかったほどなのだから、いま、こうしてCMでやりたい仕事に関わらせてもらっているのがありがたいですし。やりたい仕事をやらせてもらえるということは、いくら大変であってもやれないよりはずっといいわけですから、「三日連続の徹夜で大変だ」なんて言っている場合じゃないんです。スタッフからそう愚痴を言われたときの私は、「世の中、一週間も寝ないでトンネルで工事している人もいるんだぞ!」と、そんな人たちのことをまるで知らないのに怒りだすというヘンな親父になっていますね。 佐々木宏の名言|やりたい仕事なら頑張れる

本当にこう言ったかは知りませんが、睡眠するくらいなら、仕事をしたい。そういう人が、広告クリエーティブの頂点にいるわけです。そして、広告界の横綱たちの多くがこんな感じなので、皆が広告クリエーターとして成功するためにこのレベルを目指すわけです。広告クリエーターは広告が好き。いいモノができるまでトコトンやる。つらくても幸せ、罵倒されても立ち上がる。この状態を維持できないと、広告マンはやっていけないのです。

だから、ほとんどの広告マンの大半は好きでこのブラックと呼ばれる労働をやっているはず。むしろ自分たちにすれば、ホワイト。「徹夜し、罵倒され、でも広告が作れるならそれで幸せ」って人しか残れない。それが、広告業界なのです。

「死ぬ!」って思ったら逃げた方がいい。

おっと、記事を書いていたら朝になってしまった… 染み付いたブラック体質は簡単には抜けないようだ。